■ 建築基準法って何?
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◇ 前置き −建築基準法をよく知るために−
『建築基準法は優等生』
その理由(わけ)
1.時代に応じた基準を柔軟に盛り込む改正が頻繁にされている。
例をあげると、平成6年の第8次改正の時代背景にはバブル景気による地価高騰があり、狭小敷地における住空間の確保を目的に住宅地下室の容積緩和がなされた。平成10年の第9次改正は、平成7年の阪神淡路大震災を契機に抜本的に構造規定を見直すとともに、性能規定の導入、建築手続きの合理化等を盛り込んだ改正がおこなわれた。平成14年の第10次改正では、バブル崩壊後の景気低迷を続ける日本経済を背景に「都市の活力ある再生」に視点をむけた改正が行われ、またシックハウス症候群に対する規制も新たに加えられた。
2.建築基準法はシンプルな構成をしている。
民法等とは異なり、建築基準法自体はシンプルな構成をしている。建築基準法の目次と施行令の目次を参照頂ければ解かりやすいが、建築基準法は性能の技術的基準を施行令に収録し別にすることにより、その目的と基準の適用範囲を明確にすることにつとめている。
3.地域的な条件に対応できる余地がある。
建築基準法は、基準法>施行令>施行規則>条例 という構成をとることにより、地域的な風土や歴史の違いから生じる差異に対応できる余地を残している。
『建築基準法はタンス』
建築基準法とその関連法令を全てを理解しようってのはまず無理です。そんなのは時間の無駄。
建築基準法はタンスなんだ。と念じてみる
「建築基準法のタンス」と「都市計画法のタンス」や「消防法のタンス」は少なくとも別の部屋に置いておきましょう。「施行令のタンス」も部屋が広ければ置いても良いですが、もれなく「条例のタンス」や「告示のタンス」も一緒についてくるので思い切って別の部屋に置いても良いでしょう。一緒の部屋だとその圧迫感に気が滅入るので
「ひきだし」は一杯あります。しまわれている「もの」も一杯あります。
どこの「ひきだし」にどんな「もの」がしまわれていたかをだいたい覚えておきましょう。
頻繁に「ひきだし」から「もの」を取り出すと、どんな「もの」がしまわれているか覚えます。
引っぱり出さなくてよい「もの」は出さなければ良いし、どこの「ひきだし」だったか覚えておく必要もありません。
そうこうしているうちに、「ひきだし」と しまわれている「もの」とが大体結びつくようになれば、でかいタンスは結構重宝します。
『法律より難しい』
建築基準法がいくら優れた法律があったところで、その法律を誰も守っていないならば何の役にも立ちません。私の駄文みたいなもんです。ほんとうに難しいのはその条文なのではなくて、建築基準法をいかに適切に準用し遵守するかなのでしょう。
また、消費者の皆さんに適正な建築手続きとその目的を説明することは我々建築士の大切な責務です。
◇ 建築基準法の目的
第1条 この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする。
すばらしい条文でしょ
最低の基準でしかないのですよ。建築基準法は
たとえば法42条(道路の定義)で建築基準法上の道路は4m以上なくてはならない という最低の基準が定められています。これは、緊急車両(消防車や救急車)が容易に通行できたり火災の延焼を防いだりするために定められた基準です。安全で安心して暮らせる社会を築くために、みんなで守らなければいけない最低限の基準をさだめているのです。
建築基準法は単に建築行為を規制することが目的ではなく、「国民の生命、健康および財産の保護」が根幹の目的だということを忘れず、我々技術者は自らのモラルでさらに高い基準を保つことができるように努めたいものです。
法律には、それぞれ最初にその目的が記されています。
参照: その他関係法令の第1条 (民法第1条はぜひ覚えておいてください)
◇ 建築基準法の歴史
建築基準法の歴史をさかのぼれば、江戸期に公布された防火対策の御触書などにそのルーツがあるそうです。
建築基準法の前身は大正8年制定、翌9年施行された「市街地建築物法」です。これは同時に成立した「都市計画法」とともに、家屋の密集する都市を対象とした法律で都市の防災対策として制定されました。
その後第2次世界大戦後の社会情勢の大きな変革とともに建築基準法は昭和25年5月24日に制定され、同年10月25日より施行されています。その後も建築基準法は社会の発展とともに改定され現況に即した法律として運用されてきました。
平成7年1月17日5時46分に淡路島北部を震源とするマグニチュード7.2の地震が発生しました。阪神淡路大震災です。それを契機に各規定の見直しが進み、建築物の安全性の一層の確保と合理的利用の推進、民間機関による建築確認・検査制度の創設、建築基準の性能規定の導入を始めとする単体規定の見直し、建築規制の適用の合理化等の措置を構ずる事を内容とした建築基準法の改正が行われました。
平成14年の第10次改正では、バブル崩壊後の景気低迷を続ける日本経済を背景に「都市の活力ある再生」に視点をむけた改正が行われ、またシックハウス症候群に対する規制も新たに加えられています。
建築基準法は時代の変化や要求に適切に対応するため、常に検討され改定を続けてきた法律です。
[建築関連法公布年表] |
公布日付 | 法 令 名 称 | 備 考 |
大正 8年 4月 5日 | 都市計画法 公布 | 9年1月1日施行 6大都市に施行 |
8年 4月 5日 | 市街地建築物法 公布 | 9年12月1日 施行 |
12年 9月24日 | 特別都市計画法 公布 | 関東大震災復興のための法律 |
昭和 2年 2月 3日 | 不良住宅地区改良法 公布 | |
8年 3月30日 | 都市計画法町村にも適用 | |
21年 9月11日 | 特別都市計画法 公布 | 戦後復興のための法律 |
23年 7月24日 | 消防法 公布 | 8月1日 施行 |
24年 5月20日 | 建設業法 公布 | 8月20日 施行 |
25年 5月24日 | 建築基準法 公布 | 11月23日 施行 |
25年 5月24日 | 建築士法 公布 | 7月1日 施行 |
27年 5月31日 | 耐火建築促進法 公布 | 昭和36年6月 廃止 |
29年 5月20日 | 土地区画整理法 公布 | 30年4月1日 施行 |
32年 5月15日 | 建築基準法 第 1次改正 公布、施行 | |
32年 5月16日 | 駐車場法 公布 | 33年2月1日 施行 |
34年 4月24日 | 建築基準法 第 2次改正 公布 | 12月23日 施行 (内装制限、部材ごとの耐火性能ほか) |
35年 5月17日 | 住宅地区改良法公布 施行 | |
36年 6月 5日 | 建築基準法 第 3次改正 公布 | 12月4日 施行 (特定街区制度) |
36年11月 7日 | 宅地造成等規制法 公布 | 37年2月1日 施行 |
38年 7月16日 | 建築基準法 第 4次改正 公布 | 39年1月15日 施行 (容積地区制度) |
43年 6月15日 | 都市計画法(改訂) 公布 | 44年6月14日 施行 |
45年 6月 1日 | 建築基準法 第 5次改正 公布 | 46年1月1日 施行 一部45年10月1日 (違反是正措置、建築基準の整備、用途地域の整備、容積規定の整備) |
46年 6月17日 | 建築基準法施行令改正 公布 | [構造] 帯筋基準の強化 |
51年11月15日 | 建築基準法 第 6次改正 公布 | (日影制限ほか) |
56年 4月24日 | 建築基準法施行令改正 公布 | [構造] 帯筋比、耐震設計 2次設計法導入ほか(新耐震設計法の導入) |
62年 6月 5日 | 建築基準法 第 7次改正 公布 | 62年11月16日 施行 (第1種住専 3階建住宅高さ制限緩和) |
平成 4年 6月26日 | 都市計画法、建築基準法改正 公布 | 住居系用途地域の細分化 |
6年 6月29日 | 建築基準法 第 8次改正 公布 | 6年6月29日 施行 (住宅地下室の容積緩和ほか) |
10年 6月12日 | 建築基準法 第 9次改正 公布 | 11年5月1日 施行 12年6月1日 施行 (建築確認・検査の民間開放、性能規定などによる規制の合理化) |
14年 7月14日 | 建築基準法 第10次改正 公布 | 15年1月1日 施行 シックハウス関連は15年7月1日施行 平成14年建築基準法改正の概要 |
◇ 建築基準法の適用範囲
建築基準法は建築物及び建築物の敷地、構造、設備、用途が規制の対象となります。(法1条 [目的])
一般的な建築物は全て適用範囲に含まれますが、文化財法による国宝や重要文化財など、鉄道の跨線橋や保安施設などは適用の範囲には含まれません。(法2条1[建築物]、法3条 [適用除外])
◇ 建築基準法の体系
1.総括的規定
第1章 【総則】(1条―18条)
目的、用語の定義
2.単体規定
第2章 【建築物の敷地、構造および建築設備】(19条―41条)
建築物自体の安全性、居住環境の向上のため
構造的・防火的・衛生的安全性等に対する規定
3.集団規定
第3章 【都市計画区域内の建築物の敷地、構造および建築設備】(41条2―68条26)
建築物の集団化によって形成される都市の防災、環境向上のため
都市計画区域内における集団としての規定
4.その他周辺規定
手続、許可、建築協定、建築審査会などの規定(69条―103条)
建築基準法は大きくはこのような4つの枠で区切ることができます。
建築基準法(法律)に基づき より詳細な基準を建築基準法施行令(政令)で定め、それらの運用および行政事務について建築基準法施行規則(省令)が定められています。また、地域的な風土や歴史の違いから生じる差異等に柔軟に対応するため都道府県レベルで条例が定められます。
◇ 建築基準法の目次
第1章 総則 (1条―18条)
第2章 建築物の敷地、構造及び建築設備 (19条―41条)
第3章 都市計画区域等における建築物の敷地、構造、建築設備及び用途
第1節 総則 (41条2・42条)
第2節 建築物又はその敷地と道路又は壁面線との関係 (43条―47条)
第3節 建築物の用途 (48条―51条)
第4節 建築物の敷地及び構造 (52条―60条)
第5節 防火地域 (61条―67条)
第6節 美観地区 (68条)
第7節 地区計画等の区域 (68条2―68条8)
第8節 都市計画区域及び準都市計画区域以外の区域内の建築物の敷地及び構造 (68条9)
第3章の2 型式適合認定等 (68条10―68条26)
第4章 建築協定 (69条―77条)
第4章の2 指定資格検定機関等 (77条2―77条57)
第4章の3 建築基準適合判定資格者の登録 (77条58―77条65)
第5章 建築審査会 (78条―83条)
第6章 雑則 (84条―97条6)
第7章 罰則 (98条―103条)
附則
参考: [建築基準法施行令 −目次−]
法令条文の閲覧は 法令データ提供システム (総務省行政管理局)
法令用語の解説は 法令用語解説
◇ 難解な建築基準法
建築基準法の難解なところは「何条を見ろ」な記述が多いところです。
例えば建築基準法の最終条文
第103条 第三十九条第二項、第四十条若しくは第四十三条第二項(第八十七条第二項においてこれらの規定を準用する場合を含む。)、第四十九条第一項(第八十七条第二項又は第八十八条第二項において準用する場合を含む。)、第四十九条の二(第八十七条第二項又は第八十八条第二項において準用する場合を含む。)、第五十条(第八十七条第二項又は第八十八条第二項において準用する場合を含む。)、第六十八条、第六十八条の二第一項(第八十七条第二項又は第八十八条第二項において準用する場合を含む。)又は第六十八条の九(第八十七条第二項において準用する場合を含む。)の規定に基づく条例には、これに違反した者に対し、二十万円以下の罰金に処する旨の規定を設けることができる。
クラクラするでしょ。これを見て全ての条文を引きなおすツワモノもそういないでしょ。大体こういった記述に一般人は辟易し法律嫌いになるのです。
そんな建築基準法を少しでも解って頂く為に (一般人向け)
- インターネットで建築基準法を閲覧する (ページ内検索ができて楽だから)
- 解らない用語を検索する (法令用語の解説を参照する)
- 解らないことは役所で聞く (最近の行政マンは親切だ)
- 解らないことは設計事務所に聞く (掲示板やメールが良いかもしんない)
そんな建築基準法が嫌いなあなたに (業界人向け)
- 毎年基準法の本(法令集)を買う (新しいほうが気持ちいいから)
- 仕事ででかけるときは必ず携帯する (迷ったときにはすぐ引く癖をつける)
- 付箋やインデックスを貼らない (貼るのが面倒だし、引きにくくなるから)
- 条文に下線を引くときは3色で
1〜3はどうでも良いですが4はお勧め
条文のうち重要条項を赤色で、「ただし・・・」などの例外条項を青色で、参照条項を緑色(好きな色で良いですけどね)で引きます。括弧内が長い場合はくくると解りやすくなります。
[参考例]
第42条 この章の規定において「道路」とは、次の各号の一に該当する幅員四メートル(特定行政庁がその地方の気候若しくは風土の特殊性又は土地の状況により必要と認めて都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内においては、六メートル。次項及び第三項において同じ。)以上のもの(地下におけるものを除く。)をいう。
一 道路法 (昭和二十七年法律第百八十号)による道路
二 都市計画法 、土地区画整理法 (昭和二十九年法律第百十九号)、旧住宅地造成事業に関する法律(昭和三十九年法律第百六十号)、都市再開発法 、新都市基盤整備法 (昭和四十七年法律第八十六号)又は大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法 (昭和五十年法律第六十七号)による道路
(以下略)
上記のように括弧内を機械的にくくって すっ飛ばす。次に、重要なところだけ赤線を引く。例外があれば青線を引く。こうすると難解な条文も大したこと無いでしょ。
さっきの103条だって実は簡単な条文なんですよ。
第103条 第三十九条第二項、第四十条若しくは第四十三条第二項(第八十七条第二項においてこれらの規定を準用する場合を含む。)、第四十九条第一項(第八十七条第二項又は第八十八条第二項において準用する場合を含む。)、第四十九条の二(第八十七条第二項又は第八十八条第二項において準用する場合を含む。)、第五十条(第八十七条第二項又は第八十八条第二項において準用する場合を含む。)、第六十八条、第六十八条の二第一項(第八十七条第二項又は第八十八条第二項において準用する場合を含む。)又は第六十八条の九(第八十七条第二項において準用する場合を含む。)の規定に基づく条例には、これに違反した者に対し、二十万円以下の罰金に処する旨の規定を設けることができる。
ねっ、簡単でしょ。
あとは 103条のような何処を見ろ条文には 法令集を2冊用意すると完璧さ!
まずは嫌いにならない事から始めましょうよ。
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◇ その他関係法令の第1条
民法
第1条 私権ハ公共ノ福祉ニ遵フ
2 権利ノ行使及ヒ義務ノ履行ハ信義ニ従ヒ誠実ニ之ヲ為スコトヲ要ス
3 権利ノ濫用ハ之ヲ許サス
建築士法
第1条 この法律は、建築物の設計、工事監理等を行う技術者の資格を定めて、その業務の適正をはかり、もって建築物の質の向上に寄与させることを目的とする。
建設業法
第1条 この法律は、建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによって、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進し、もって公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。
都市計画法
第1条 この法律は、都市計画の内容及びその決定手続き、都市計画制限、都市計画事業その他都市計画に関し必要な事項を定めることにより、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もって国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。
消防法
第1条 この法律は、火災を予防し、警戒し及び鎮圧し、国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとともに、火災または地震等の災害に因る被害を軽減し、もって安寧秩序を保持し、社会公共の福祉の増進に資することを目的とする。
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