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■ 平成14年建築基準法改正の概要
−どこが変わった建築基準法−
平成10年の建築基準法第9次改正(いわゆる「性能規定導入に伴う建築基準法大改正」)公布から4年の歳月が経ちました。
第10次改正となる今回の建築基準法の改正は、バブル崩壊後の長引く景気低迷という社会的な背景もあって、「都市の活力ある再生」に視点を向けた規制緩和が随所に見られます。
さて、どこが改正されたんでしょう。
□ 改正の柱は5本立て
今回の改正は大きく5つに分類ことができます。
- まちづくりに関する都市計画の提案制度の創設
- 用途地域における容積率等の選択肢の拡充
- 容積率制限等を迅速に緩和する制度の導入
- 地区計画制度の見直し
- シックハウス対策のための規制の導入
□ いつから施行?
平成14年7月12日 公布(平成14年法律第85号) 平成15年1月1日施行
シックハウス関連については 平成15年7月1日施行 となります。
□ 改正の目的と概要
1.まちづくりに関する都市計画の提案制度の創設
- [目 的]
- 地域住民が主体となって「まちづくり」に取組んだ成果を、積極的に都市計画行政に取り込むべく、住民やまちづくり団体からの都市計画の提案の手続きを整備した。
-
- [概 要]
- 一定規模以上(原則 0.5h以上)の一団の土地の区域で、その提案の内容が都市計画マスタープラン等法令の基準に適合しており、土地の所有者等2/3以上の同意を得た都市計画案を、都市計画行政に提案することができる。
-
- [法令改正箇所]
- 都市計画法 21条の2(都市計画の決定等の提案)
- 以下 21条の3〜5
2.用途地域における容積率等の選択肢の拡充
- [目 的]
- 経済社会情勢の変化を背景に、建築物の利用状況の変化やニーズに応じるために容積率等の選択肢の拡充をした。
-
- [概 要]
- 容積率制限、建ぺい率制限、敷地規模制限、斜線制限、日影制限について制限が変わった。
- −−> 別表参照
-
- [法令改正箇所]
- 建築基準法第52条(容積率)
- 法53条(建ぺい率)
- 法53条の2(建築物の敷地面積)
- 法56条(建築物の各部分の高さ)
- 法56条の2(日影による中高層の建築物の高さ制限)
- 都市計画第8条(地域地区)
3.容積率制限等を迅速に緩和する制度の導入
- [目 的]
- 都市の有効高度利用,都市再生の進捗を図る上で、民間事業者によるプロジェクトのリスクを軽減し実施の円滑さを確保するため。
-
- [概 要]
- 総合設計制度等における審査基準を定型化し、許可を経ずに、建築確認の手続きで迅速に緩和できる制度を導入した。
- ・一定以上の敷地面積及び空地割合を確保する住宅形建築物について、指定容積率の1.5倍以下で容積率制限を緩和できる。
- ・建築物の前面道路や隣地における天空率が、従来の斜線制限にもとづく天空率よりも低下しないことを確認して斜線制限を除外することができる。
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- [法令改正箇所]
- 建築基準法第52条(容積率)
- 法56条(建築物の各部分の高さ)
- 法57条の2(高層住居誘導地区)
- 法59条の2(敷地内に広い空地を有する建築物の容積率等の特例)
- 法68条の5の3(住居と住居以外の用途とを区分して定める地区計画等の区域内における建築物の容積率の特例)
4.地区計画制度の見直し
- [目 的]
- 昭和55年創設以来、経済社会情勢の変化に対応して、改正を繰り返した結果生じた類似の制度や類型分化に伴う複雑化を整理,合理化するため。
-
- [概 要]
- 地区計画制度を整理,合理化し、一つの地区計画で、地区の特性に応じて用途制限,容積率制限等を緩和,強化できるようにした。
- ・住宅地高度利用地区計画および再開発地区計画を廃止し、地区計画に統合した。
- ・地区計画に従来の住宅地高度利用地区計画または再開発地区計画に相当する区域として、再開発等促進区を定めることができるものとした。
- ・適正な配置,規模の公共施設を備えた区域において、その合理的な高度利用と都市機能の更新を図るため高度利用型地区計画を定めることができるものとした。
- ・地区計画で定めた用途について、条例で用途地域の制限を緩和できるものとした。
- ・地盤面の上にある通路等の地区施設を定めた場合、その地区施設下の建築物について建ぺい率の制限を緩和できるものとした。
- ・その他地区計画における特例規定等の整理
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- [法令改正箇所]
- 建築基準法第68条の2(市町村の条例に基づく制限)
- 法68条の3(再開発等促進区等内の制限の緩和等)
- 法68条の4(建築物の容積率の採光限度を区域の特性に応じたものと公共施設の整備の状況に応じたものとに区分して定める地区計画等の区域内における建築物の容積率の特例)
- 法68条の5の2(高度利用と都市機能の更新とを計る地区計画等の区域内における制限の特例)
- 法68条の5の3(住居と住居以外の用途とを区分して定める地区計画等の区域内における建築物の容積率の特例)
- 法68条の5の4(区域の特性に応じた高さ、配列及び形態を備えた建築物の整備を誘導する地区計画等の区域内における制限の特例)
- 法68条の5の5(地区計画等の区域内における建築物の建ぺい率の特例)
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- その他関係法令
- 都市計画法第12条
- 都市再開発法7条
- 幹線道路の沿道の整備に関する法律第9条
- 密集市街地における防災が行くの整備の促進に関する法律第32条
5.シックハウス対策のための規制の導入
- [目 的]
- 建築材料等から発散する科学物質によっておこる空気汚染が原因のいわゆる「シックハウス症候群」の対策として、居室内の衛生を確保するため。
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- [概 要]
- ・クロルピリホスを発散するおそれのある建築材用の使用を禁止した
- ・ホルムアルデヒドを発散するおそれのある建築材料の使用を制限等を行うと共に、機密性の低い在来木造住宅を除き換気設備の設置を義務付けた。
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- [法令改正箇所]
- 建築基準法第28条の2(居室内における化学物質の発散に対する衛生上の措置)
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- [参 照]
- 改正建築基準法に基づくシックハウス対策について (国土交通省)
- シックハウス対策に係わる「住宅の換気設備マニュアル」について (ベターリビング)
- シックハウス対策に係わるFAQ (日本建築センター)
- <資 料>
- Q&A 平成14年改正建築基準法等の解説
- 監修 国土交通省住宅局建築指導課・市街地建築課,都市・地域整備局都市計画課
- 編集 建築・都市法制研究会
- 出版 新日本法規出版株式会社
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- 補足:今回とりあげた「平成14年建築基準法の改正の概要」は、上記資料に記載した「Q&A 平成14年改正建築基準法等の解説」より抜粋し掲載しています。この本は改正箇所の解説だけではなく、パブリックコメントに対する意見募集からの抜粋と思われるQ&A、社会資本整備審議会の答申書なども掲載されており、とても勉強になる一冊です。
- <参考URL>
- 「建築基準法等の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令案」及び「建築基準法施行令の一部を改正する政令案」について(国土交通省)
2002.12.27
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