まずは下記をクリックして年齢階級別人口を見て頂きたい
総務省統計局統計センター > なるほどデータ for きっず > お役立ちデータ倉庫
これは良く見かける年齢階級別グラフで、日本は成熟期をむかえた都市国家に見られる典型的な逆細り型であることが解かる。
これが示すものは何か?
少子化による人口減少と住宅需要を単純にモデル化するために、25歳〜49歳までを新規住宅取得者層と仮定する。(以降 仮定住宅取得者層とよぶ)
総務省統計局統計センターの人口推計調査結果(*1)より 平成13年確定値を用いて 25年ごとに人口合計を抽出すると
0歳 〜 24歳 合計 3,381万人
25歳 〜 49歳 合計 4,335万人
となる。
上記より25年後には仮定住宅取得者層人口は現在の 4,335万人から 3,381万人に減少する。率にして 22%減少することが伺える。
これは住宅需要が毎年約 1%づつ減少し、25年後には現在に比べて住宅市場が 22%縮小することを示している。
住宅の設計業務に限って考察すると、今までの過去 10年間で設計業務が CADの導入により革新的に省力化されたように、今後の技術進歩に伴う高能率化により 一戸の住宅に必要な設計労力は確実に減少する。(生産の効率化)
この技術進歩に伴う生産の効率化は潜在経済成長率にほぼ等しと考えると 1年あたり 1.5%〜2%程度(*2)と試算できる。 (*2: 潜在経済成長率 1.5%〜2%程度 野村総研 継続するデフレ圧力より)
これら需要の減少(市場の縮小)と技術進歩による省力化(生産の効率化)を加味すると、25年後に住宅市場で必要とされる供給人口(設計者数)は現在の 50%程度になろう。
なにもこれは住宅設計業務に限ったことではなく、建築業界はもちろんのこと国内を市場とする生産者はすべてこの「需要の減少(市場の縮小)と技術進歩に伴う省力化(生産の効率化)に伴う危惧」に直面している。
また、恒常的に需要の減少と供給の過多を引き起こす 少子化はまさにデフレスパイラルの根幹的背景だ。日本の経済が成長期を過ぎ成熟期をむかえた今、短期的には消費(需要)が増えることがあったとしても 長期的にみると消費(需要)は減少する。そういう時期なのだということを踏まえた供給者の意識改革と対応が必要だ。
今後 時代にあった新たな雇用やビジネスモデルも生まれるだろうが安穏としてはいられない。いかに自己の業務を特化させて供給と需要を結びつけることができるかが我々に課せられた命題だ。
参考:
デフレーション [deflation]
貨幣および信用供給の収縮によって、貨幣供給量が流通に必要な量を下回ることから生ずる一般的物価水準の下落のこと。生産水準の低下と失業の増加が起こり、景気後退や不況に結びついてゆく。
インフレーション [inflation]
特定の経済部門の価格上昇にとどまらず、一般的な物価水準が継続的に上昇し、貨幣価値が下落すること。
デフレスパイラル
需要 < 供給
↓
企業の在庫が増加し、モノの価格が下がる
↓
相対的に通貨価値が高くなる
↓
金融機関からの借り入れは借り手に負担が重くなる
↓
企業は投資、消費者は消費を抑制する
↓
需要 < 供給 繰り返す
参考URL:
・総務省統計局統計センター人口推計 (*1)
・野村総研 継続するデフレ圧力 (*2)
・国土交通白書第3節「近年新たに顕在化した課題」
・平成13年度国民生活白書「少子化の現状」
・野村総研 少子高齢化社会への政策対応
2002.04.19
人間の脳は視覚により得たデータを圧縮して記憶する。
ネタ元: 京都大学 増田 稔 教授 講演「人はなぜ木を好むのか」
よく知っている人の顔を写真や当人を見ないで絵を描こうとするとまるっきり思い出せなかったりする事や、似顔絵が平均的な顔との差異を強調していることで解かって頂けると思う。
これは、人間の脳が限られた記憶容量しか持たないために恰もデータを圧縮するように特徴だけを抜き出して記憶しており、その他のデータは圧縮する過程において削除しているからだ。
さしづめ、私の脳は記憶容量自体は少ないが極めて優秀な圧縮能力があるようだ。圧縮しすぎて人の容姿はもちろん名前すら削除している。
あまりにネタ元より逸脱すると「そんなこと言っとらん!」とお叱りをうけるので。下記は勝手な考察だということを付け加えておく。
さて、人は建物に対してどういう風にイメージをもつのか?
シャープなというと、ガラスやコンクリートの鋭角なラインを思い浮かべる。
やさしいというと、木材を多用したやわらかいものを思い浮かべる。
高級なというと、石やステンレスなど本物を使用したテクスチャを思い浮かべる。
安っぽいというと、張りぼてやビニル、剥げた塗装などを思い浮かべる。
人それぞれに多少違いはあろうが、平均より突出した部分をイメージとして捉えていることは確かだ。
色もイメージを捉える要素としては大きい。
WEBセーフカラー「配色事典」を見ていただきたい。
これも明らかにイメージだ。建物の内装を計画する際にはこれらのイメージする色を10%〜20%程度使用すると効果的だ。
ナチュラルな感じが良いからと、部屋の6面ともに木を貼る必要はない。YR(イエローとレッド)色のフローリングを張ったり、木肌をみせた家具を置いたほうが効果的だ。
手に触れる範囲や目につく部位を意図したイメージ側に寄せることで良好なイメージを形成することができる。平均より突出しすぎるとかえって嫌悪感をもたせることになりかねない。
天井や廻り縁などは目につきにくくそのイメージは大半が色によるものだ。床や巾木は比較的目につきやすく色と材質によりイメージを形成する。扉や棚板などはより目につきやすくそのイメージは材質による。什器類(家具など)は最も目につきやすくそのイメージは(たぶん)金額に比例する。
建物の外観のイメージは、壁の色や屋根の色、建具の色に大きく左右されるが、一部分に目を引き付けるもの(例えば無垢材の玄関扉)があればその材質による印象も大きい。また、外部であることから、植栽や舗装材による影響も大きく受ける。
上記を踏まえ、建物を計画するなかでコストバランスを考えると。
納戸はもちろんのこと書斎なども仕上げに拘る必要はさほどない。玄関やリビングを広めに計画し採光を多くとることで、そのイメージは格段に良くなる。
なにも金持ちだからと全室の床を総大理石貼りにすることも無いわけだ。手の届く範囲、目につく部分に工夫をこらすことによってセンスの良い計画になる。
これを広い範囲でやっちゃうとセンスが無い「趣味の悪い」計画になる。
人間の悩の記憶容量はどうぜ少ないのだから、覚えちゃいないところまで本物志向である必要は全く無い。
追記
この考察は、見えないところはどうでも良いといった意味ではない。
露出部であれ、隠蔽部であれ、必要とされる性能を有した上での意匠上の考察だと理解いただきたい。
2002.04.04