− 日照権についての受忍限度って何? −
日照権
憲法25条で保証された国民すべてが健康で文化的な生活を営むための権利に基づいた、太陽の光を享受する権利。
隣地に建築物等が建設されることによる日照権の侵害は、あきらかに受忍限度を超えたものについては建築の差止めや損害賠償請求を行うことができます。
ここでいうあきらかに受忍限度を超えるとはどういう状態なのか。
建築基準法で定められた基準
まず最初に、対象建築物が適切な手続きを経た適法な建築物かどうかを調べてください。
工事中の建物には建築確認看板の設置が義務付けられています。看板には建築確認通知書の番号が記載されていますので、役所で当該物件の概要書を閲覧することができます。
建築基準法で定められた基準は受忍限度をはかる一つの尺度になります。
日照に関係する基準を下記します。
居室の採光
住宅等の居室には床面積に対して政令で定める割合以上の有効な採光のための窓を設けなくてはならない。[法28条]
健康で衛生的な環境を確保するために、採光基準を設けている。窓もしくは直上の庇等から境界線までの距離と窓の面積等により有効採光面積を求める。
外壁の後退距離
第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域については 1.0m又は1.5mのうち都市計画において外壁の後退距離を定める。[法54条]
絶対高さ制限
第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域については 10m又は12mのうち都市計画に定められた高さを超えてはならない。[法55条]
隣地斜線制限
都市計画において隣地境界線からの水平距離に比例して高さを定めその限度を超えてはならない。 [法56条]
北側斜線制限
都市計画において真北方向に対し境界線からの水平距離に比例して高さを定めその限度を超えてはならない。 [法56条]
日影規制
主に住居系地域を対象に中高層建築物の建設による周辺への日照条件の悪化を防止するために高さの限度を定める。 [法56-2条]
これらの形態制限は都市計画で定められた用途地域に応じて良好な住環境を保護するために隣棟間隔や高さ等の限度を定めている。
建築基準法に定められた基準を守っていれば、受忍(我慢)するべきなのかというと、一概にそうとは言えないようです。
しかし少なくとも、建築基準法に定められた基準を守り かつ、適切な手続きを経た建築行為については、建築主は正当な権利を主張することができます。
ただし、建築基準法は最低基準なので、モラルをもってより良い住環境を実現するために周囲との協調をはかる必要は否めません。
もし対象建築物が建築基準法違反の場合は、建築基準法9条[違反建築物に対する措置]にしたがって 特定行政庁により 建築工事の停止や建築物の除却、改築、使用制限等の命令がされます。
司法救済制度の利用
建築基準法等の法律を遵守しているが、日照権侵害による精神的損害が深刻な場合には互いの主張を調整する手段として司法による救済制度の利用を検討してください。
- 工事中の物件に対しては工事差し止め仮処分申請を行うことができます。
- 工事完了後の物件に対しては日照権侵害による賠償請求を行うことができます。
まずは、各地方自治体には建築紛争調停委員会等名称の仲裁機関がありますのでそちらで相談されるのが良いでしょう。
私権の基本原則
民法第1条に私権の基本原則が記されています。
民法第1条
私権は公共の福祉に遵ふ
2 権利の行使及び義務の履行は信義に従ひ誠実に之を為すことを要す
3 権利の濫用は之を許さず
互いに誠実に話し合いすることが 問題解決の一番の近道です。
2002.08.31