サザエさんは昭和21年より新聞に連載され、昭和44年にはテレビ放映が開始されたのだそうだ。
ということは、連載当初より変わらぬであろうサザエさんの家は住居学の貴重な資料にちがいない。
□ サザエさんの家を思いだす
波平世帯の主寝室である座敷(8帖)、客間(6帖)、茶の間(4.5帖)、台所(4.5帖)、サザエさん世帯の部屋(6帖)、カツオとワカメの勉強部屋(4.5帖)に風呂、便所、玄関。あやふやな記憶だが波平の座敷には縁側もあったか。
思い出せる生活の舞台はこれぐらいか、ひょっとしたら納戸や物入などもあるかも知れぬ。
想像するに、座敷、客間、茶の間、台所を「田」の字に並べ、それらにサザエさん世帯の部屋と子供部屋が廊下により接続された配置だろうか。
屋根は和瓦で切り妻、壁は漆喰の真壁造りか(板張りだったような気もするが)、玄関へのアプローチには門柱があり生垣と板塀とで周囲は囲われている。
それぞれ部屋は和室のしつらえで、床は畳、天井は竿天井、壁は漆喰もしくは綿壁、子供部屋などは大壁だったかもしれない。
ベット等の固定された寝具はなく、布団を敷いて寝る。日中は押入にしまわれているので、居室を有効に利用することができる。食事の仕度は台所で行い、茶の間の卓袱台に配膳する。冬には卓袱台をコタツに代え、タマはここでゴロゴロしている。
木造平屋建て2世帯住宅で、庭の広さから想像するに、延べ床面積 30坪/敷地面積 80坪〜90坪といったところか。
□ サザエさん家は一般的な庶民の家か?
サザエさんの家の住人は、磯野波平、フネ、カツオ、ワカメ、フグ田マスオ、サザエ、タラオで計7人。居住室数は6部屋。居住室の延べ畳数は 33.5畳。
それらを条件に総務省統計局の資料と比べてみる
居住環境の変化 |
| サザエさん家 | 昭和38年 | 昭和48年 | 平成10年 |
1住宅あたりの居住室数 | 6 | 3.82 | 4.15 | 4.79 |
1住宅あたりの居住室の畳数 | 33.5 | 21.76 | 23.98 | 31.77 |
1住宅あたりの延べ床面積 | 90 | 72.52 | 77.14 | 91.92 |
1人あたりの居住室の畳数 | 5.58 | 4.91 | 6.61 | 11.24 |
資料 総務庁統計局「住宅統計調査報告」「住宅・土地統計調査報告」
サザエさん家は2世帯住宅であるため、大きさや広さのボリュームでいうと平均より随分大きい。しかしながら、1人あたりの居住室の畳数でいうと、平均に近い数値となっている。
1人あたりの居住室の畳数はこの40年で大きく改善され、平成10年の統計値によるとサザエさん家の数値の約2倍となっている。
現在の感覚でいうと随分手狭な環境である。しかしながら前述したように、和室を基本とした住居においてはベッドなどの固定家具は少なく、狭い住空間を有効に利用する生活形態が一般的であったことも伺える。
これらの情報から検証すると2世帯住宅ではあるものの、ごく一般的な住環境であったと推測される。
約30年前の昭和48年の統計値までしかさかのぼることはできないが、参考までに、一戸建て住宅の戸数についても触れておく。
住宅の戸数 (単位:1000戸) |
| 昭和48年 | 平成10年 |
住宅総数 | 28,731 | 42,922 |
一戸建て | 18,820 | 25,269 |
(そのうち平屋建て) | (10,015) | (5,391) |
長屋建て | 3,533 | 1,823 |
共同住宅 | 6,452 | 16,601 |
[構造種別] 木 造 | 24,776 | 28,275 |
[構造種別] 非木造 | 3,954 | 15,647 |
資料 総務庁統計局「住宅統計調査報告」「住宅・土地統計調査報告」
一戸建て平屋住宅はこの30年で半減した。これは一戸あたりの敷地面積の減少に伴い土地の高度利用が進んだためであろう。また、マンション等の共同住宅形態の割合が大きく増え、あわせて非木造の住宅が増えている。
住宅総数として増えているのは、2世帯住宅などの生活形態は少なくなり、一戸あたりの世帯数の減少のためだと思われる。
□ やっぱりサザエさん家はうらやましい
サザエさんの家自体は、華美な装飾や高価な仕上をしているようには見受けられず、それはごく一般的な仕様だと思われる。2世帯住宅であることを考えると、台所、風呂なども共用しており、決して快適で充分な住空間を有してはいない。
しかしながら、80坪〜90坪程度ある敷地を有効利用することにより、水廻りを別にした2世帯住宅を計画することも可能だ。
なににもまして都内にそれだけの土地をもっているってことは.......
カツオちゃんは、ああみえて資産家の息子だったのね。
次回 のび太家にみる住居学 .......ウソ
2002.12.12