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コラム (2003.06)

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 ■ INDEX (目次)
 三匹のこぶたにみる建築技術2003.06.18
 体験学習のススメ2003.05.28
 地震に備える2003.02.19
 我慢の限界2002.08.31
 エコエネルギー2002.06.20
 やり場のない憂い2002.05.27
 少子化と住宅需要の関係2002.04.19
 伝建地区「今井町」のまちなみ2002.03.27
 排他的共倒主義2002.02.26
 「格付け」 (Ratings Lists)2002.01.23
 こんなときこそ道路をつくれ2002.01.04
 履行保証制度2001.12.14
 日本の競争力2001.11.14
 地震に対する建築物の耐力2001.10.31
 あららホームサーバ2001.10.06
 こだわり2001.09.01
 質実剛健2001.08.08
 情報ソース2001.07.25
 オープンソース(open source)2001.07.13
  
 あんあんねっと2003.04.01
 サザエさん家にみる住居学2002.12.12
 いいわけ2002.07.26
 難解なイマドキの言葉2002.06.12
 うちの柱 特上なん?2002.05.02
 イメージと記憶容量2002.04.04
 屋外広告物規制2002.03.13
 国土交通省コメントを翻訳2002.02.05
 ん? 法的整理2002.01.14
 迷走する日本経済2001.12.25
 検索サイトの活用法2001.12.09
 住宅寿命指数2001.11.04
 サーバの引越し2001.10.16
 業界再編2001.09.11
 業界の取組み2001.08.17
 第三セクター2001.07.27
 建築士のステータス2001.07.16
 コラム(column)を書くぞ2001.07.12
 

三匹のこぶたにみる建築技術

三匹のこぶたの兄弟がそれぞれ、「ワラ」「木」「レンガ」で家を建てるお話し。 原作は不詳だがどうやらイギリスの民話らしい。ということは、イギリスの建築技術の歴史を検証する上で重要な資料にちがいない。


日本人は、一般に住宅となれば在来木造住宅を連想するわけです。歴史的に見れば東大寺大仏殿のような巨大な木造建築もあるわけで、なんでわざわざレンガで家をつくるのだろうと。 ましてや、二番目のブタさんは、山の中腹で、りんごの木の脇に建てるのですから、環境的にも、もっとも合理的だと思わざるを得ません。


三匹のこぶたの家を思い出す

思い出すもなにも、絵本があれば見てください。いや、なにも子供部屋に足をはこんでコソコソ探してもらわなくとも結構。ココをみれば「そうそう、こんな感じ」ってすぐに思い出すことができるでしょう。


「ワラ」「木」「レンガ」の歴史

有史前、イギリスには訳わからん巨石群の遺跡があったりしますが、Carn Euny では人頭大の石を積み重ねた住居跡がみられます。 その石の土台に、日本でいう竪穴式住居のような「ワラ」の上屋がかぶっていたと考えられています。

4世紀になるとイギリスはローマ帝国に支配されローマ様式の大規模な石造建築の技術が輸入されます。 レンガもこの頃ローマ人が持ち込んだ技術です。

その後13世紀になると様々な架構技術がみられるようになります。
土壁の住居(Earth)Cob house は 粘土と砂、ワラを練り とうもろこしの穂軸で編んだ骨組みに塗り重ねた いわゆる土壁の構造です。屋根の架構は木造で、ワラ葺きやスレート石葺き屋根です。
木架構の住居(Cruck-framing)は主構造木材を屋根の頂点で合掌し、母屋、垂木を載せ屋根を葺きます。梁桁を支える間柱のあいだを細い「木」で網み壁土を塗ります。その後、木造架構技術は発達し、Box-framing、Wealden house のように柱と梁とを整形に緊結することにより、2階建て,3階建てといった大規模な木造架構が可能となります。

その一方で伝統的な石組積造の架構技術は、18世紀に入り「レンガ」を大量生産するようになり、一般的な建材として普及します。 18世紀後半になると、産業革命とともに都市部の人口が急増します。建築物だけでなく道路や下水道の整備にも「レンガ」は用いられ、レンガ組積造の建造物群は産業革命のシンボルとなります。

参考サイト:
  ・Sources for Building History
  ・LOOKING AT BUILDINGS
  ・UK Heritage


3匹のこぶたが「ワラ」「木」「レンガ」を選んだわけ

1,666年ロンドンの大火では13,000戸の住宅を焼失しています。風雨による災害も稀ながら発生し、軽質な屋根材を用いた住居には甚大な被害を及ぼしたことが想像されます。 それらの災害から生命や財産を守る安全な住居、すなわちイギリス人にとって良い住まいとは、重厚で耐火性能の高い 石やレンガの組積造の住居であったのです。イギリスでは大規模な地震が少なく、倒壊の危険性が少ないことから、現在でも多くの組積造の建築物が現存しており、美しい景観を見せてくれます。

こぶたたちは、レンガが一般に普及する18世紀後半、都市に近い近郊の農村部に暮らしていたのでしょう。それ以前だと、とてもブタさんの小遣いで簡単に手に入れることができたとは思えません。また、それ以降だと現場の管理が厳しくなり、容易に建材をわけてくれるとは思えないからです。 産業革命で建設需要が拡大しワンヤワンヤのときに、彼らは近所の現場に搬入される建材を拝借し自らの家を作ることになります。

怠け者の一番上のおにいさんブタは、軽く加工の簡単な建材ワラを。建築をなめていますね。
二番目のブタさんは、当時一般的な小作農家で広く利用されていた建材を。平均を望む庶民タイプ。
末っ子のブタさんは、産業革命という時代を背景に都市部に林立する巨大な建造物を見て、火災や風雨にも強い建材であるレンガを選んだにちがいありません。

それぞれ極端な3タイプですが、その当時既にそのニーズに対する選択肢が拡充されていたということでしょうか。建築をなめきった一番上のおにいさんブタはさて置き、二番目のおにいさんブタは最低限の技術を知っていたら、そうやすやすと食べられはしなかったのにと、建築技術者としてはとても残念に思います。

参考サイト:
  ・The Three Little Pigs


追記
原作(かどうかしらないけれど)を読むと、一番目二番目のブタさんはおおかみに食べられちゃうんですねぇ <可哀相>。 そいでもって、二番目のブタさんの家がりんごの木の脇というシチュエーションは無かったりします。

追記の追記
文中の三匹のこぶたの家の写真はCounty Line Orchard (US)の施設のようです。元ネタは http://www.hotflamingdeath.com/fall_02.htm からの拝借です。   ...問合せがあったので参考まで

2003.06.18

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